クサカリツボダイの基礎知識
このところ首都圏でも取り扱いが増え、人気がでてきたクサカリツボダイ。干物をはじめとして、さまざま加工品として流通しています。
あまり知られていないクサカリツボダイについて、基礎的な情報を提供します。
なお、このページの作成については、この魚の研究の第一人者である水産総合研究センター・遠洋水産研究所の柳本卓さんが監修しています。
稚魚となったクサカリツボダイは、海山から成育場に移動し、1,2年をすごします。その後、海流(アラスカ湾流の続流と考えられます)に乗って移動し、天皇海山海域へ帰ってきます。
クサカリツボダイは、特に生まれた海山を選ぶようなことはなく、上手に着底できた海山で棲息しています。
なお、一部の群は、カルフォルニア海山へ着底し、別の群は日本の伊豆諸島周辺にも着底し、それぞれ棲息していると考えられます。
クサカリツボダイは、ツボダイとは近縁種ではありますが、別の種類の魚です。
市場では、ツボダイがクサカリツボダイと同種と思われていたりして、ツボダイと表示されていることが多いですが、ツボダイの漁獲はあまりありません。
市場で流通する多くのツボダイは、クサカリツボダイだと考えられます。
写真は、ツボダイです。
ホンツボダイと表示されている魚も流通していますが、同じクサカリツボダイです。
これは、特定の地域で太ったクサカリツボダイが別種と考えられ、「ホンツボダイ」と称してきた慣習によるものです。現在ではDNA鑑定の結果、太ったホンツボダイも、やせたクサカリツボダイも、同種であることがわかりました。
クサカリツボダイは6~7歳まで生きると考えられ、漁獲対象となっているものは2~3年歳の魚が多いとみられますが、実は、成魚となってから、だんだんやせ形になってくることがわかってきました。
多くの魚は、年齢をとるごとに大型になりますが、クサカリツボダイは、違った成長を見せるようです。
その理由としては、クサカリツボダイの主要なエサが、他の魚が食べない、サルパと呼ばれる脊索動物(ホヤの仲間)や、ウシヒキガイなどであることから、エサの競合に負けている可能性があるそうです。
しかし、やせ形のクサカリツボダイであっても、脂ののりは、白身魚としてはトップクラス。上品な甘みを持った身にからあふれ出る、魚の脂がまじった肉汁の旨味がたまりません。ご飯にも、酒の肴にも絶品です。
バラエティ豊かに楽しまれているクサカリツボダイ